篩(ふるい)にかける

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それは本当に何の変哲もない会話からの始まりでした。

入門から一二週間経った頃だろうか、というある日のこと。

いつも通り基礎練習を終えて、小休止をとっていた時のことでした。

目次

他愛のない会話

基礎練習の中に、おそらく体幹を鍛える目的と思われる反復動作がありました。これが今までやったことがない動作だったので先輩に質問していました。

未來楽

簡単な動作のように見えて、難しいです。見よう見まねでやってますが、どこか違う気がします。

先輩

まあねー、そのうち慣れるよ。

未來楽

そうですよね。でも、私物覚え悪いので人より理解が遅いだろうな〜

先輩

自分は二週間くらい試しに続けてみたことはあったかな〜。っと、まあそれはそれで、次の稽古始めましょう。

未來楽

あ、時間ですね!よろしくお願いします!

とまあ、こんな軽い会話をした記憶がありますが、それくらい本当に取るに足らない休憩中の世間話のような感じだったんですね。でも、できないことが気になっていた私は、こっそり先輩の真似をしてこの基礎練習のうちの反復動作を二週間続けてみることにしたのでした。

二週間後の稽古場にて

この反復練習。正直なところ、とーーーーーっても地味で面白みがなく、ひたすら同じ動作の繰り返しなので、そこそこやっていると飽きます。決まった時間行うのですが、行う前後で何がどうなるというわけでもありません。

つまり、自分が何をしているのか、何か手応えがあるといったものではないのですね。最初は。

そうこうしているうちに二週間が過ぎた日の稽古場でのことでした。

私はいつも早めに稽古場に向かうのですが、その日もいつも通り稽古着に着替え、軽く準備運動をしながら稽古開始の時間まで待っていました。ほどなく先輩も道場に到着されたので、世間話のような流れで先だっての基礎練習の話を再開していました。

そういえば、例の基礎練習をとりあえずと思って二週間やってみたんですけど、と口を開いた時でした。

先輩がぱっと顔を輝かせて、私の顔を見るとこう聞いてこられたのです。

先輩

二週間!やったの!?

未來楽

え、ええ。先輩の真似してとりあえず二週間やってみようかなって。

先輩の反応にいささか困惑して答えると、満面の笑みになった先輩は「ちょっとこちらへ」と道場に到着したばかりの師範の前に私を連れていったのでした。師範の前で先輩は一礼すると、徐に口を開きました。

師範。二週間やったとのことです。

師範

うん、そうか。

未來楽

ぼかーん…

はい、本当にぽかーんでした。何が何だか分からない状態の私でしたが、師範の前で突っ立っているのも無礼なので、そろりと正座してお二人のやり取りを黙って見守ろうとしていたところ、師範が私の方を見やり静かに尋ねられました。

師範

二週間やってみて、どうでしたか?

未來楽

はい。最初は特に何も感じませんでした。でも、続けていくうちに足首や膝、股関節などの関節が無理なくスムーズに動くように感じました。

最初は全身に力が入っており、続けるに従って体の無駄な力が抜け、次第に頭で考えて動くのではなく自然に体のしなりに任せるようになっていることに気づきました。

ただ、それがどういう意味をもっているのか私にはわかりません。正解かどうかも分かっていません。

すると、私の言葉が終わってすぐに、動作の意味やコツをいくつか教えてくださり、そばに控えていた先輩に再び声をかけました。

立派な回答をしようとしても師範の前では無駄なことだと分かっていたので、正直なところをそのままお伝えしました。

師範

君のやり方でいいから、次の工程を教えてよい。例の書類も読めるように渡しておいてください。

先輩

はい。

では、稽古を始めましょう!と師範は立ち上がり、先輩と私は一礼して稽古を始めたのでした。

自らの意思で行動することを尊重する

その後、先輩からは基礎練習のより詳しいやり方を記録した書類を渡していただき、動作見本を見せていただき、今後も反復練習を続けるようにと教えていただきました。

もうここまでくると私もうっすら気づいていたのですが、どうやら何の面白みもない基礎練習を自分の意思で続けることができるかどうかお試しが入ったんですね。どう行動するか篩にかけられたのだと感じました。

先輩

師範のお考えでね。基本的に師範はこれをこうしなさい、といった指導はされないんです。個人が創意工夫していろんなことを自らのセンスで試し、その結果の積み重ねの中でたまに助言するか、しないかという程度なんですよ。
もちろん、本当に危ない時や完全に間違った方向へ向かっている時は正してくださいますけどね。

未來楽

もしかして、私が何も気に留めず、基礎練習をしなかったら次の段階には進めなかったんでしょうか。

先輩

押し付けてやるような稽古じゃないですからね。あくまで当人のペースに合わせて進めて行きます。でも、そうですね、二週間やってみてくれてよかったです!

私はこれまで二つの武道の経験がありましたが、『センス』という言葉をきいたのは初めてでした。

武道のセンス。稽古のセンス。

まるで武道というか芸術の話をしているような感覚でした。確かに武芸という言葉がありますから、二つを分けて考えるものではないのかもしれません。

そして、一方的に教えるよりも自らが考えることを尊重する、その指導方法に感動を覚えたのでした。

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この記事を書いた人

- 八百万の神々に学び、タロットの叡智で道をひらく -

日本神道の心と龍神様の御加護に導かれ、タロットカードを主軸にルノルマンカードや各種オラクルカードを介して、高次元領域からの言霊をお伝えします。
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