私がその武道を始めようと思ったきっかけは、正直覚えていないのです。
時代劇だったか、漫画だったか、人づての何かの話だったかも覚えていませんが、いつかやりたいと願っていたものでした。
とてもマニアックというか、知る人ぞ知る武道であり流派も限られているので、申し訳ないのですが、ここでその武道そのものを語ることは差し控えさせていただきます。
未來楽お話したいことの中心は、武道の内容ではないため悪しからずご了承くださいませ。
問い合わせのハードルがそもそも高かった
インターネット検索でだいたいの情報が取得できる時代。注文した商品は、当日や翌日には玄関先に置いておいてくれるし、何か聞きたいことがあればメールやチャットで即座にコンタクトとることができる、そんな時代。
ですが、その武道の存在を知って問い合わせようとしたところ、サイトの問い合わせページには携帯電話の番号が小さく掲載されているだけでした。



このご時世に個人の携帯電話番号しか掲載していないって、あり得るんだな。さすがに見ず知らずの人の携帯にいきなり電話するのは相当勇気がいるんだけどな…。
私が問い合わせようとしたのは、一つの支部の支部長に直接つながる電話番号でした。武道を習いたい、でもいきなり電話してどんな話になるのか分からないし、そもそも電話はあまり好きではない…と丸二日ほど悩みに悩んでいました。
そのうち、悩むのがめんどくさいというか、悩んでいる時間がもったいないと思うようになり、思い切って電話をかけてみたところ、「それなら、一度道場を見学に来てみてください。3回ほど体験というかたちで無料で参加していただき、続けられそうであれば正式に入会を検討してみてください。」と慣れた口調で回答をいただいたのでした。
目の奥に深淵が広がる眼差し
約束の日に道場に向かい、ど緊張状態で支部長さんに挨拶をし、今日から3回体験教室というかたちでお世話になるので「よろしくお願いします!」といささか前のめり状態で頭を下げました。
少し早めに到着して周囲を伺っていたのですが、続々と門下生が集まり、その度に「今日から体験で参加させていただきます!よろしくお願いします!」を繰り返して挨拶をしていました。



師範は稽古前にいらっしゃいますから、もう少し待っていてくださいね。いらっしゃったらご挨拶できるように声をかけますので。



はいぃ!わかりました!よろしくお願いいたします!
まあ、今だから笑えますが、緊張のあまり「よろしくお願いします!」としか言葉が出てこない状態でしたから、滑稽な様子だったと思います。
稽古開始10分前に道場がざわり、として振り返ったところ、師範が入り口からそろりと入ってこられたところでした。
皆さんが一斉に駆け寄り、「よろしくお願いいたします!」「よろしくお願いします!」とそれぞれにご挨拶をされ、師範席が整えられているところで、お声がかかりました。



いらっしゃいました。では、ご挨拶しに行きましょう。紹介しますね。



は!はいっっ!!!
支部長さんの後ろについて、早足で師範席に近づくと、さっと膝をおり、正座をして深く一礼します。



未來楽と申します。入会させていただきたく、まずは体験教室というかたちで参加させていただくことになりました。何卒よろしくお願い申し上げますっ!
ガチガチに緊張して頭をさげてから、少し顔をあげようとしたところ



あ、はい、はい。ま、慣れだから。
と、はいはいどーも、どーも、といった軽い感じで静かにお声がけいただきました。
ちょっと拍子抜けしつつ、すっと顔をあげたその時、師範と正面から目が合ったのですが、その時のことを今でも鮮明に覚えています。



はっ!
視られた…!
それが瞬間に入ってきた感覚でした。1秒にも満たない一瞬でしたが、師範の目の奥からすうっと私の存在の後ろの方へ突き抜けていくような眼差しを感じ、同時に私の方からは師範の目の中に深い藍色に広がる澄み切った宇宙のような空間が広がって見えました。
師範は支部長さんの方へ軽く向き直ると



じゃあ、案内してあげてください。
と声をかけて、さあ稽古を始める時間ですよ、といつも通りの稽古を始められたのでした。
後で知ったいろんなこと
その日の体験教室は無事に終わり、稽古後に道場を清掃している時に支部長さんが声をかけてくれたのですね。体験教室初日の感想を聞いてくれたのですが、実はもう、師範とご挨拶を交わした時点で入会することは決めていました。



お疲れ様でした、どうでしたか?慣れない動作ばかりで疲れたでしょう?



はい、あの!入会します!今日から入会ということでお願いします!
と、ろくに支部長さんの話も聞かずに入会を即決していました。笑いながら、「いやいや、あと2回無料で体験してもらえるので、その後にね」と快諾してくれました。
その後、無事に2回の体験教室を終え、正式に入会してからしばらく経った頃、入会の仕組みや師範についていろんな方からお話を伺うことができました。



問い合わせを電話にしているのは理由があってね。メールではなく、直接自分の言葉で、自分の考えを話せる方に入門してもらいたい意図があるんだよ。



師範のお考えでね。そこが最初の試練石っていうところかな。



私は別に気にしないで、すぐ電話しちゃったけどね〜!



私は丸二日、悩みました。



でもやりたいと思ったから電話してきたでしょ?そういうことだよ。
また、師範と出会った方の多くはその後の人生ががらりと好転したり、生き方や考え方の大きな転換点を迎えられたり、中には霊能や特別な才能が開花する方や強化される方が出たりと逸話に事欠かないことも知りました。
今思い出しても、こんな出会いは師範以外にはなかったな〜と思います。











